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    エポイがキュレーションするインスピレーション

被写体が持つエネルギーに、
写真を通して触れる
PHOTOGRAPHY BY GOTTINGHAM
TEXT BY KURUMI FUKUTSU

  • Photography by GOTTINGHAM
  • Text by KURUMI FUKUTSU

自然の摂理と、命のサイクルをまっすぐに見つめながら、生きるエネルギーを豊かな感受性で捉え、写真に表現する写真家の川内倫子さん。1997年より、フリーランスとして活動を始め、2001年に写真集『うたたね』『花火』『花子』(全て2001年/リトルモア刊)の3部作を発表し、翌年には、写真集『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛賞を受賞。海外からの注目も高く、これまでに世界各地で展覧会を開催。2005年にフランス・パリの「カルティエ財団美術館」で開催した「AILA + Cui Cui + the eyes, the ears」の展覧会は、国際的な評価を得た。
何気ない風景、またそこに存在する空や花、生物も、川内さんのカメラを介すると、柔らかく美しい光に包まれながら、驚くほど繊細に写真中に現れてくる。そんな川内さんの作品中でリンクする、 被写体とそのエネルギー、また人間の感情と色彩の関係性とは?

被写体が持つエネルギーに、写真を通して触れる

写真と色の関係性

色をどのように意識して写真を撮っていますか?
色というテーマに限定して考えたことはないです。ある特定の色を撮りたいという動機はなく、色をテーマに作品を制作したこともありませんね。写真を撮り始めた時はモノクロで撮影していたので、カラー写真と出会ったことで、自分の中でより強いリアリティとのリンクが生まれました。この出会いが、自分が初めて色を意識した出来事かもしれません。
では、モノクロ写真で表現することに限界はあると思いますか?
モノクロはモノクロなので、限界という表現は適切でないと思います。実は、プリントするのが好きだったので、写真を撮り始めました。モノクロ写真のプリントは簡単にできるし、当時カラー写真をプリントする機材も学校に無かった。とにかくプリントするというプロセスが好きでした。ある時、カラー写真にトライしてみたいという衝動に駆られ、自宅現像用のキットを買ってカラー写真のプリントを始めました。それが面白くてカラー写真を撮るようになりましたね。カラー写真を始めて、自分の撮っている写真と自分の住んでいる世界との距離がぐっと近づいたと感じました。
被写体が持つエネルギーに、写真を通して触れる
無題《Illuminance》シリーズより、2007年

変化する色彩感覚

川内さんはご自身を取り巻く世界をリアリティとして捉え、写真に収めていますよね。ということは、写真を撮るということは、日記をつける様な、自叙伝側面もあるのでしょうか?
そうですね。最近、次回の展覧会のために、初期の作品「うたたね」をプリントしていたのですが、当時のプリントの色が、今の自分にはぴったりフィットしないから、微妙にですが違う色でプリントしたんです。私自身のリアリティがその時々で変化している。自分にしか分からない、すごく微妙なニュアンスだったりするんですけどね。そういう意味では、撮影する時に色は意識しないけれど、プリントする時は色にこだわるので、ちょっと矛盾しているかもしれません。
被写体が持つエネルギーに、写真を通して触れる
無題《Illuminance》シリーズより、2007年

エネルギー源としての被写体

どのように被写体を決めるのでしょうか?
直感で被写体を選びますが、後で分析すると、被写体が持っているエネルギーに触れたい、自分を引っ張ってくれるものを選んでいると思います。例えば、『あめつち』(2013年/青幻舎)の制作では阿蘇に5年くらい通いました。つまり、阿蘇の持っているエネルギーが、当時の私にとってそれぐらい必要だったんですよね。もちろん、全部の被写体に対してそうかといえば、違う場合もあるのですが。
エネルギーをイメージ化しているということでしょうか?
そうですね。写真だから写っている像が現実である。けれども、作品化のプロセスで、現実を抽象化することで、その“間”の存在が見えてくる。それが、写真の面白い点だと思うんです。
被写体が持つエネルギーに、写真を通して触れる
無題《Illuminance》シリーズより、2007年

感情とリンクする色彩

色にまつわるエピソード、記憶はありますか?
今考えると、若い時の方が、色にこだわっていたかもしれません。曇った日にばかり写真を撮っていましたし。単純に弱っていたのかもしれないですね(笑)。晴れって、元気な時は良いのですが、自分が弱っている時は曇りや雨が落ち着きます。当時は向き合うことに対して積極的ではなかったんですよね。鮮明な時って無かったのかもしれないのですが、それを個性として捉えて、写真を撮り続けてみようとも思っていました。
当時は明るい写真を撮りたいと思ったことはありましたか?
ないですね。自分らしさを追求すると、色が重要ではなかったので。自分が落ち着く色は? と考えると、あまりコントラストがなくて柔らかいトーンが私の好みでした。絵でいうと、水彩画ですね。最近は自分らしさとは?といった葛藤に縛られずに、写真を撮ることができるようになったので、ずっと楽になりました。色があることはすごく美しいことだと思うんです。歳を重ねて、やっと肯定的に思えるようになった。色って弱っている人には強いですから。自分が強くなったのかもしれませんね(笑)。
被写体が持つエネルギーに、写真を通して触れる
無題《あめつち》シリーズより、2012年

今、写真を通して触れたい色

色を使って撮影するなら、今の川内さんはどんな色を使いますか?
特に考えたことはないですが、あえて言うなら白ですね。光に一番近いから。原色はエネルギーが強く、自分が見たい世界とは離れている。私が自分の作品で見たいのは、その間なので。もっと生の側に、と思ったら、強い色を選ぶかもしれない。もっと歳を重ねたら、生への執着が生まれて、原色を撮りたいと思うかもしれませんね(笑)。

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